麻酔処置の必要性について
歯科や避妊去勢などの手術の際には麻酔処置(動物を安全に眠らせること)が必要となります。
多くの飼い主様は麻酔処置に対して漠然とした恐怖感がございます。
『麻酔が怖いです』『麻酔は大丈夫ですか?』『安全ですか?』などのご相談をよく受けます。
当院では『100%安全な麻酔処置は存在しない、何か予期せぬことが起こる場合もある』とご説明致します。麻酔処置後に動物達の体調が悪化する、最悪の場合、亡くなることもあるかもしれません。『100%大丈夫、絶対に問題は起こりません!』と言いたいところですが、言えません。簡単に言えるほど、麻酔処置は軽いものではありません。
私も麻酔をかける(動物を眠らせる)ことは毎回怖いですし、緊張します。なぜなら
「麻酔処置の怖さを知っている」
「1度たりとも同じ麻酔処置はない。動物によって毎回違う」からです。
この「麻酔処置」は獣医医療を実践する上で大きなテーマとなっています。「麻酔処置」を行わずに手術や処置ができれば一番良いと思います。しかし、多くの場合、動物達は獣医医療者が行う処置を「侵害行為」と受け取ります。そのため、思わぬ事故を防ぎ、飼い主様、動物、獣医医療スタッフの3者が安全に行うためには、どうしても「麻酔処置」が必要となります。
残念ながら、現在の獣医医療では「麻酔処置」を避けては通れないものとなっています。
麻酔処置を安全に行うための対策
この避けては通れない「麻酔処置」を安全に行うために、当院では下記3つの対策を行っています。
麻酔技術(麻酔知識、技術)の向上
スタッフ各自が勉強する、訓練する。
当院では技術向上のため、積極的に学会発表、論文投稿、セミナー参加を行っています。
ヒューマンエラーを無くす
ヒューマンエラーの原因は、慣れによる怠慢がほとんどです。
常に初心を忘れずに「麻酔処置」に臨みます。
動物を知る
手術前検査(術前検査)を行う。
動物の現状を知ることで、麻酔処置後に起こりうる病態を予想します。
特に当院では、手術前検査(術前検査)を積極的に実施しています。
術前検査によって、思わぬ病気が見つかるケースもございます。潜在的に存在していた病気を発見したことによって、「麻酔処置」が延期や中止になることもあります。
この「麻酔処置」を延期、中止する事がリスク回避の上で重要な点と考えています。
麻酔処置のリスクを少しでも減らすために、そして飼い主様、動物、獣医医療スタッフの3者が安心して麻酔処置にのぞめるように努力致します。
前置きが長くなりましたが、当院の術前検査をご紹介いたします。
手術前検査(術前検査)
血液検査(FUJIFILM:ドライケム 外部:IDEXX、モノリスなど)
血液検査機器
当院で行う検査と外部センターで行う検査がございます。
検査項目 | 血球計算、血液生化学、電解質、ホルモン検査、凝固検査、炎症指数など |
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よくある疾患 | 肝臓疾患、腎臓疾患、甲状腺機能障害、高脂血症など |
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レントゲン検査
(FUJIFILM:FCR)胸部、腹部のレントゲンを撮影致します。
呼吸器、循環器、関節、骨、腹腔内臓器などを評価します。レントゲン診断装置(FCR)
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超音波検査
(Canon:Aplio)腹腔内臓器、心臓、関節などを評価します。
超音波診断装置 APLIO 300
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心電図検査(フクダエム・イー:D320)
心電図は心臓の動きを電気的な波形に現して把握します。特に、不整脈の診断には不可欠の検査です。
動物用心電計D320
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COAG2NV
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IMMUNO AU10
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Microsemi LC-662
これらの検査を必要に応じて行います。そのため多少の費用が掛かりますが、動物達が安全に、飼い主様が安心して「麻酔処置」を行うためにも必要であると考えておりますので、ご理解ご協力の程、よろしくお願い致します。